労働法なんてきらいだー (労務問題賃金制度 各種規定規則


2006年09月11日

離職の誓約書の有効性3

3.会社組織としての問題はないか?

9月10日放映の行列ができる法律相談所にあった内容について、

離職の誓約書の有効性1
離職の誓約書の有効性2

にて考えてきましたが、3つ目の観点として、

3.会社組織としての問題はないか?

について考えて見たいと思います。

行列ができる法律相談所において、本件に関する判断は、問題社員に対する見解のみでした。
勿論、番組の目的としては妥当な構成だと思います。

しかし、現実問題としてこれを捉えた場合、問題社員の責任ばかりに目を向けるのはどうでしょうか?
なぜ、このような結果となってしまったか、についての考察が本当は重要なのではないでしょうか?

私の考える結論から言いますと、今回の件で最も問題だったのは、上司の管理意識が不十分だったと言う点です。

部下のミスは全て上司の責任だとの意識が上司には最も必要な考え方なのですね。

仮に個人事業主が社員に仕事を任せて十分な管理を行わず、社員が業務ミスを犯したとします。
この場合、そのミスによる損害は会社がかぶることになりますが、これはそのまま上司である個人事業主が、その損害を丸々かぶると言うことです。

人に任せると言うことは、本来、それだけの覚悟が必要だと言うことであり、たとえサラリーマンだとしても、部下を持つ上司としては、同じレベルでの管理責任があるとの認識することが重要なわけです。


本件の問題が発生した本当の理由は、上司としての責任という考え方が不十分であったことが最大の原因であったと思われます。
これは言い換えると、組織制度の設計・浸透が不十分であったと言うことです。

問題社員個人を責めるより前に、組織制度の根本理念が社員全体に理解されていなかったことを認識し、対策を打つことが最も重要なのだと思いませんか?

離職の誓約書の有効性2

2.職務態度を理由とする失敗で解雇できるか?

9月10日の行列ができる法律相談所における内容について、
離職の誓約書の有効性1、にて誓約書の有効性について考えて見ました。

では、次の観点として、

2.職務態度を理由とする失敗で解雇できるか?

について考えて見たいと思います。

「もし契約に失敗したら会社を退職します」
とまで言ったので仕事を任せたのに、全くやる気を見せず、仕事の進行は順調とのうその報告さえ行い、結局は契約に失敗してしまった。

なるほど、会社としては彼を解雇したいと考えるのは尤もと思えます。
しかし、現状の解雇法令の解釈から言えば、たとえ重大な業務ミスといえども、ただ一度のミスで解雇するのは非常に困難と言えます。

解雇が有効と言うには少なくとも会社に多大な損害を与え、かつ、その損失が社員の故意またはそれに相応するレベルの社員の責があると明確に判断されることが必要でしょう。

本件の場合、少なくともこの社員は成功したいとの思いは持っていました。
ただ、彼の発想があまりにも安易だっただけのことです。
また、プレゼンまでの業務期間中、上司は彼の怠惰な職務態度を十分認識しているにもかかわらず、口頭注意する程度で、有効的な処分・指導・対策を行なったとは思われません。

解雇にはそれに至る段階的な処分等の対応実績が重要であり、本件において、この対応が不十分であったことはいなめません。
ゆえに、解雇が認められることは非常に可能性が低いものと判断されます。

本件において妥当な処分と考えられるのは、いわゆる左遷、降格や人事異動といったところでしょうか?
現職務に対し評価した結果、職務能力不足と判断されたと言う理由によるものですね。

勿論、職務怠惰の点について服務規律違反と判断し、罰金処分とすることも可能かもしれませんが、この場合、少なくとも契約の失敗を見た上で処分を決定するのはまずいでしょう。
あくまで、怠惰な行為に対する罰則であれば、怠惰な状況を確認した時点での処分でないと問題となりえます。

また、業務の失敗に伴う降格処分等を行なうためには、就業規則等にこれに関する規定を設けておくことも必要です。

業務ミスを能力評価の見直しに含める表現での降格規程を就業規則に記載しておくことが重要と考えます。


解雇や懲戒処分を行うには十分な下準備が必要だとの認識しておくことが、もしもの場合に大事なんですね。


3.会社組織としての問題はないか? に続く。

離職の誓約書の有効性1

今日(9月10日)の行列ができる法律相談所、見ましたか?
面白い内容でしたね。

そう、
社運をかけたプロジェクトに対し、失敗すれば退職するとの誓約書を書いた社員がいい加減な職務態度で契約に失敗し、その後、平気な顔で会社は辞めないと離職を拒否した話しです。

行列ができる弁護士さん達の結論は、誓約書の有効性と会社責任に対する判断から解雇は困難となってました。

この結論は妥当と思います。
しかし、現実的にありうる話なので、もう少し深くこの内容について考えて見たいと思いませんか?


当件の問題点は大きく3つに分けられます。

1.離職の誓約書は有効か?
2.職務態度を理由とする失敗で解雇できるか?
3.会社組織としての問題はないか?


以下、それぞれについて、ちょっと検討して見ましょう。


1.離職の誓約書は有効か?

行列ができる法律相談所でのタレントさんの意見は全員が解雇有効でした。
たぶん、誓約書が有効だとの判断だと思います。
確かに、心情的にも有効であって欲しいとの思いは当然と考えます。

しかし、誓約書を書いた本人の側から考えて見ましょう。

「契約に失敗したら会社を辞めます」
こう言っている段階で、この社員が本気で辞めることを考えていると思いますか?
まず間違いなく、失敗することなんて考えてません。
あるいは、失敗して会社を辞める自分を想像したりはしていません。

「この仕事に命をかけます」
よく聞く言葉ですが、これと一緒ですね。
まず、仕事に失敗してもこの人は死にませんし、それほど失敗について自分を責めたりはしないでしょう。

一般的に、自分のやる気を示すために、こう言った言葉を用いる人には、真剣に失敗に対しての危険予測を行なう人は少ないです。

逆に、失敗したら大変だと考える人は、この様な言葉で自分をアピールしたりはしないものですね。


話がちょっと脱線したかもしれませんが、実際この様に考えると、上記のような人が書いた誓約書もまた、もともと信用性が薄いものと判断できます。
ゆえに、誓約書自体の有効性も低いものと考えられます。

では、誓約書をより有効なものとするにはどうしたらよいか?

先ずは誓約書をより具体的な表現で書いてもらうことです。
たとえば、
「○日の契約に失敗したら、2週間後の○月○日に離職することを了承願います」
のように、具体的な日にちを記載することで、誓約書の真実味、言葉を変えれば有効性がUPするでしょう。

その上で、会社側からの誓約書を了承し、失敗の場合、離職の手続を行なうことを約す書面を提出しておけば、ぐっと有効性は増すものと思われます。

しかし、これでも裁判となった場合、確実に勝てるとはいいきれませんし、そこまでやっては社員も会社に対し信頼をもてないことになるのでしょう。

結局は誓約書がどうのと言うことで、これを理由に重大なプロジェクトを任せたこと自体が間違いなんですね。

社員が上記のような言葉を用いた時点で、その社員が信頼できるかを検討しなおすことこそが、上司としては重要なのでしょう。


離職の誓約書の有効性2に続く